東京地方裁判所 平成元年(タ)583号 判決
原告 甲野花子
右訴訟代理人弁護士 藤平国数
被告 A
(西暦一九五二年一二月二六日生)
主文
一 原告と被告とを離婚する。
二 原告と被告との間の未成年の子B子(西暦一九七八年六月七日生)、C子(西暦一九八〇年九月二八日生)、D子(西暦一九八四年八月一一日生)の親権者を原告と定める。
三 訴訟費用は被告の負担とする。
事実
一 原告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求め、その請求原因として次のとおり述べた。
1 原告(国籍日本、昭和二五年八月一三日生)とイスラム教徒である被告(国籍インドネシア、西暦一九五二年一二月二六日生)は、昭和五二年一二月六日、日本で婚姻の届出をし、B子(国籍インドネシア、西暦一九七八年六月七日生)、C子(国籍インドネシア、西暦一九八〇年九月二八日生)、D子(国籍インドネシア、西暦一九八四年八月一一日生)をもうけた。
2 原・被告の夫婦仲は、被告が麻薬を使用したりしていたことが原因で、C子が生まれたころからうまく行かなくなっていたところ、被告は、昭和六二年三月二一日、原告ら家族を日本に残して、インドネシアに帰国してしまい、昭和六三年八月に来日して原告を訪ねてきた以外は、原告に連絡をしてこないし、同年九月から三カ月間、毎月二〇万円を送金してきたほかには生活費を送金してこない。
3 本件については、被告がイスラム教徒であるので、インドネシアのイスラム教徒に適用される離婚法が適用されるところ、右事実は、同法上の離婚原因である「夫が妻の扶助料を与えることができないとき」に該当する。
4 よって、原告は、被告との離婚を求めるとともに、原告と被告との間の未成年の子B子、C子、D子の親権者を原告と定めることを求める。
二 被告は、公示送達による呼び出しを受けたが、本件口頭弁論期日に出頭しなかった。
三 《証拠関係省略》
理由
一 《証拠省略》によると、請求原因事実のほか、原告は、昭和六三年一二月、子供を連れてインドネシアの被告の父方を訪れた際に被告と会ったところ、被告が原告らを迎えに行くと言ったので、日本に帰国して被告からの連絡を待っていたが、その後被告からの連絡は全くないため、被告との婚姻関係を継続する意思を失っていること、原告は現在肩書住所地において三人の子供と生活していること及び三人の子供は特定の宗教に入信していないことを認めることができる。
二 本件離婚については、原告が日本に常居所を有する日本人であるから、法例一六条ただし書により、日本の法律が準拠法として適用されるところ、右認定の事実によると、原告と被告との間には、日本民法七七〇条一項五号所定の事由があることは明らかである。
また、離婚に伴う親権者の指定については、法例二一条により、準拠法が定められるが、本件においては、原告と三人の子の本国法は同一でなく、また、インドネシアにおいては、宗教によって適用される法令が異なるところ、被告と三人の子供の宗教は同一でないので、それらの間の本国法が同一であるということもできないから、結局、子の常居所である日本の法律が準拠法として適用される。そして、前記認定の事実によると、三人の子の親権者としては原告が適当であると認められる。
三 よって、原告の本訴離婚請求は理由があるからこれを認容し、原告と被告との間の未成年の子B子、C子、D子の親権者を原告と定めることとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 尾方滋 裁判官 西口元 野島秀夫)